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Comix discomix / Lio 解説(1)



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1.「コミックス」と「ディスコ・ミックス」について

 <3番Aメロの歌詞原文と筆者訳>
 Tintin ne me regarde même pas
 Moi je lui fais de l'oeil et du pied
 Mais j'ai compris je n'insiste pas
 Ce garçon a un coeur de papier
 タンタン、私に 見向きもしない
 こっちは あの手でこの手なのにね
 だけどわかったわ もうやめにする
 あの子の心は 紙の薄さよ

リオのファースト・アルバム「LIO」(1980)の3曲目に収録されている本作は、ベルギーの漫画家エルジェの人気コミックス、「タンタンの冒険」シリーズがモチーフ。歌詞には同シリーズの作品タイトルや登場人物の名前が、いくつも登場します。


(タンタン)

ただし、100% タンタン・ワールドへのオマージュというわけではありません。歌詞には実は、もうひとつの仕掛けが施されているのです。

それは、曲が発表された当時、まだ人々の記憶に新しかった、様々な実際の事件を暗示させるキーワードが隠されているということ。日本では、1978年に大ヒットしたピンク・レディーの「透明人間」が同じ手法を取っていましたっけ。


(ピンク・レディー「透明人間」。歌詞は、こちら)

超能力者ユリ・ゲラーがTV番組で念力によるスプーン曲げを披露して火のついた「念力ブーム(1974年)」や、映画「エクソシスト(1973年。日本公開は1974年)」で有名になったポルターガイスト現象を、「すべては透明人間なのです」と結論づけてしまう強引な歌詞に、当時のリスナーは、「なるほどね!」とニヤリとしたり、「おいおい!」とツッコミを入れたりしていたものです。いわゆる "くすぐり" の趣向ですね。

Comix discomix の場合は、「透明人間」よりさらにヒネリが効いていて、タイトルが掛詞になっています。comix は co(「一緒に」を意味する接頭辞) + mix(混ぜること)で「ごちゃまぜ」、discomix は dis(「否定」を表す接頭辞) + comix で「非コミックス」というニュアンスを、それぞれ響かせているのですよ。要するに、このタイトルは「この歌は、コミックス(タンタン・ワールド)と非コミックス(現実世界)をゴチャマゼにしました」っていう宣言なのでした。

ところが、この手の歌詞には問題があって、時代が下るとキーワードが何のことだか、さっぱりわからなくなってしまうのです。それどころか、それがキーワードだという事にすら気づかない人も増えてしまう。「透明人間」で言えば、「天下無敵のチャンピオン / 突然ダウンを食ったのも」という下りがそれですね。

これは、1975年3月24日のプロボクシング・ヘビー級タイトルマッチで、当時無敵と言われたチャンピオンのモハメド・アリが、無名の挑戦者チャック・ウェプナーからダウンを奪われたことを踏まえているのですけれど、リリースから 30 年以上が経過した今、それを即座に指摘できる人が、何人いるでしょう?

…と、いう事で、今回の訳詞には、非常に時間がかかりました(苦笑)。

 <1番Aメロの歌詞原文と筆者訳>
 Je ris quand au pays de l'or noir
 Docteur Muller et l'Ayatollah
 Règlent leur comptes en pétrodollars
 Moi je carbure au Coca Cola
 笑っちゃうのは 燃える水の国
 ドクター・ミュラーも あのアヤトラも
 オイルダラーで 借りを返すのよ
 私、コカ・コーラで エンジンかけよう

Au pays de l'or noir(直訳: 黒い黄金の国で) は、「タンタンの冒険」シリーズ 15 作目のタイトル。日本版では「燃える水の国」と訳されています(「黒い黄金」も「燃える水」も、石油の異名です)。


(左: 「Au pays de l'or noir」表紙、右: 日本語版「燃える水の国」)

この作品は、中東の架空の産油国ケメド産のガソリンが爆発する事件が多発し、その謎をタンタンが探るお話です。この事件に裏で関与していたのがドクター・ミュラーという悪役キャラクターでした。


(ドクター・ミュラー)

「オイルダラーで借りを返す」というのは、かつてシリーズ7作目の L'île noire(直訳: 黒い島。日本語版タイトルは「黒い島のひみつ」) で偽札造りの組織をタンタンに壊滅させられた彼が、ガソリン爆発事件でケメドの石油価格を暴落させたことを示しています。

それでは、l'Ayatollah(あのアヤトラ)というのは一体誰でしょう?「アヤトラ」はシーア派イスラム法学者の称号ですが、1980年当時、この名前で呼ばれた人物はひとりしかいません。1979 年 2 月~ 4 月に起きた、イラン革命の立役者、ルーホッラー・ホメイニ師です。

それまでのイランでは、モハンマド・レザー・シャー・パフラヴィー国王が独裁的な西欧化政策を行なっていました。これに反対したホメイニ師は、亡命先のフランスから反体制運動を扇動して国王とその一家を追放し、遂にイラン・イスラム共和国の樹立を宣言して、国家元首に就任します。これがイラン革命です。


(左: ルーホッラー・ホメイニ師、右: モハンマド・レザー・シャー・パフラヴィー国王)

そしてこの革命によってイランでの石油生産が中断した事で、原油の価格が高騰し、第二次オイルショックが起きるのです。なるほど、現実世界の「オイルダラーで借りを返す」は、この原油価格高騰を指していたのですね。

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