Agnus dei / Mylène Farmer 解説(3)



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3.「私は理性(あたま)失う」について

続いて、各パラグラフの後半3行を見てみましょう。こちらは、生贄として屠られる「神の小羊」を目の当たりにした主人公の心理描写なんですが、面白いのは、それらがことごとく屠殺を連想させる慣用句で構成されている点です。

 <1番後半の歌詞原文と筆者訳>
 Agnus dei
 Te voir en chair
 J'en perds la tête
 神の小羊
 生身の貴方を見て
 私は理性 (あたま) 失くす

J'en perds la tête は、「私は逆上する」の意味ですが、直訳は「私は頭を失う」。ヒロインは生贄の小羊同様、頭部切断されるわけです(笑)。

 <2番後半の歌詞原文と筆者訳>
 Te voir ici
 Quelle hérésie
 Les bras m'en tombent
 ここで貴方に
 遭うとは何と異端
 私の肩が落ちる

Les bras m'en tombent の意味は「私はショックで脱力する」ですが、文字通りに解釈すると「私から両腕が落ちる」。これまた解体される小羊と同様ですね。

 <3番後半の歌詞原文と筆者訳>
 Excommuniée
 J'ai les pieds et
 Les poings liés
 破門にされて
 私の両手足は
 何者かに縛られ

J'ai les pieds et /Les poings liés は、「私は身動きが取れない状態にある」ですが、直訳「私は両足と両の拳を縛られている」。かつて欧米では(そして発展途上国の多くでは現在も)、屠殺直前の家畜は暴れないよう四肢をひとまとめに縛るのが一般的でした。

 <4番後半の歌詞原文と筆者訳>
 Agnus dei
 Moi l'impie
 Je suis saignée aux quatres veines
 神の小羊
 冒涜者の私は
 多くの血を流した

Je suis saignée aux quatres veines は、「私は多くの犠牲を払った」という意味になるんですが、元々の意味は「私は4本の静脈から血を流した」。1番に続いて、またもや流血シーンです(笑)。

ウーン、ここまで徹底されると、うがった見方をしたくなっちゃいますよね。もしかするとヒロインは、生贄にされる小羊を見ながら、「私もまた、この小羊と同じだ!」と思っているのかも知れません。
 
だとすれば、これは実にトンデモない事ですよ。普通の小羊なら、単なる "感情移入しすぎ" で済ませられますけど、何たって「神の小羊」は「イエス・キリスト」の別名なんですもん。

要するに彼女、「私はキリストだ」って言ってるのも同然なんです。言ってみれば、父と子と聖霊と私の、三位ならぬ四位一体説ですね。そりゃ確かに、教会から「冒涜者」として「破門にされて」当然でありましょう(笑)。

 <エンディングの歌詞原文と筆者訳>
 Je m'éloigne de tout
 Je suis loin de vous...
 私は遠ざかる すべての物から
 私が遠くなる 貴方たちから…

かくして、「私は遠ざかる すべての物から/私が遠くなる 貴方たち(=カトリック教会)から…」となるわけです。アーメン…。

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